赤い狼と黒い兎


亜稀羅には悪いけど、ここまで本気な奴に対して止める事はしないよ。

いくら弟の仲間だとしても、ね…?

それなりに覚悟してもらわなきゃな…。



「向日葵…お前、本気か?」

「当たり前ぇだろ」

『…あたしは、どうなっても知らないからね…?』

「上等じゃねぇか…!」



すると、タタタッと先に向日葵が先手を売ってきた。



『!』



ギリギリまで来るのを待ち、寸前で向日葵の拳を避けた。

…無駄な動きが多すぎる。それに、至る所に隙がある。

余計な体力を消耗するだけでなく、相手に隙を突かれやすい。



「っらぁ!!」

『…っと』



ひゅっと顔面の右横を向日葵のパンチがスレスレで通過した。

うーん…。あれだけ大見得きってたから、ちょっと期待したけど…。



『期待ハズレ、だったか……』



小さくそう呟き、向日葵を見た。

息は上がり、今にも膝から崩れ落ちそうだ。

無駄な体力を消耗するだけじゃなく、体力もないか…。



「はぁ…はぁ…」



あの短時間だけで、息切れしてるようじゃあまだまだだな。



『……終わりか』

「…っまだまだ…!」



そのうち、ストップ掛かるだろうなあ…。

そう思っていたら、本当にストップが掛かった。


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