赤い狼と黒い兎


そのあと、家に帰ってから亜稀羅に小言を吐かれた。

「馨は乗せてくれるなら誰でもいんだぁ〜」とか「俺はただのタクシーかー」とかとか…。

いやね?あなたがあたしにバイク乗るなと言ったのよ?

それで「じゃあ自分のバイク乗ってくよ」って言えば「は?ダメだよ」なんて言うし……。

いろいろ矛盾してるよ…亜稀羅…。



「ただいま〜…って、何?まだ飯作ってねぇの?」

「「あ。」」



兄貴が帰って来て早々そう言って思い出した。

カンペキ忘れてたよ…。



「…あそう。まぁ、いいんだけどな?」

「今からなんか頼む?」

「いや、弁当あるよ」

「は?なぜ??」

「仕事の残りモン」

「うわ、そんなもん食わせるのか。俺らは残飯係りか?」



そんな中、あたしは腹ペコで兄貴の片手にある袋をじーっと見ていた。

……無意識で。



「…でも、あそこに食えりゃ何でもいいって顔してる奴が1人いるぞ?」

「!」



兄貴はあたしを苦笑いして見ていて、亜稀羅はその言葉に振り向く。

…ん?あたしか??



「はぁ…。ま、いっか。食えるだけ」

「そーだそーだ。一応有り難く思え?」

「へーへー」



兄貴は、袋をテーブルの上に置き弁当を3つ取り出した。



「馨、どれがいい?」

『…亜稀羅は?』

「先選びな」



< 41 / 286 >

この作品をシェア

pagetop