赤い狼と黒い兎


どうやら今の時間、昼休みらしく殆どの生徒が廊下に出たりして騒がしかった。

…まぁ、あたしはフード被ってますから目立つでしょう。…違う意味で。



「あー…。」

『?』



急に唸り声を上げた亜稀羅を不思議に思い、見上げた。



「そーいや、郁と話すんだっけ?」

『?……ああ、そういえば』



そんなこと、すっかり忘れてたや。

自分から話せって言ったのにな…。



「気をつけてね?」

『は?…何を?』

「いろいろ?」



いや、疑問系で返されても…。

あたしは曖昧に笑い、音楽室に向かった。

ある意味、亜稀羅といると目立つ。

特に女子からの視線がはんぱない。

睨み…?みたいな視線。しかもヒソヒソ話してる声もなんとなしに耳に入る。



「あの女何!?」

「亜稀羅くんの隣に並んで歩くなんて…!!」

「何様のつもりだよあのアマ…!!」



あたし言いたい放題だ。さすが亜稀羅、美形って怖い。

父さん似だからなぁ、亜稀羅は……。

そうこうしているうちに、音楽室に着いていた。

ガラッと扉を開けると、深子と磨子がトランプをして遊んでいた。

…しかも胡座かいて。



「「あっ、リーダー!!」」



トランプを投げ出して、突進してくる双子。

何気腹が痛いんだけど……。



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