赤い狼と黒い兎
ちょうど窓も空いており、そよ風程度に風が入って来た。
『座りなよ』
「おう…」
…結構おとなしいんだなぁ…。
ま、ほぼ初対面?だし仕方ないか。
『…で、単刀直入に言うけど。昨日、あたしに助けられたって言ったよね?』
「…ああ」
『正直言って、あたしの記憶に人助けをした覚えはない』
「………。」
『それは、本当にあたしだったのかな…?』
郁は一度目を伏せ、数秒して目を開けてあたしを見た。
「間違いなく、あれは馨…。いや、黒狼だった。」
そして郁は、ぽつりぽつりと話し出した。