赤い狼と黒い兎
郁の過去
昔は荒れに荒れまくって、目が合えばすぐに殴ってた。
その日も、そうだった。
ヤクザみたいな…つうか、ヤクザか。
目が合って、睨めば、睨み返して、こっちに歩いて来る。
…思えば、俺って本当命知らずな奴だったって思う。
まあ、もともと学とかねぇし。
親がうるさかったからってのもあるし。
とにかく、俺ってバカな奴だったよ。
「あ?んだクソガキ」
「誰にガン飛ばしてだぁ?あぁ…?」
正直、やれりゃあ誰でもいい。
ヤクザとか、族とか…関係なしで。
「誰に…?誰だよ、オッサンら」
「ガキ…ナメた口利いてっと、殺すぞ…?」
「殺す?…やってみろよ」
俺の言葉にカッときたオッサンらは、殴りかかってきた。
正直なところ、余裕だと思った。
ヤクザにだって勝てるって自分の力、過信してた…。
でも、この日は違ったんだよなぁ…。
「こいつ…ッ」
「へへ…ガキのクセに、ナメとる…」
1人の男が、懐からバタフライナイフを取り出した。
ナイフとか…反則だろ……。
「お、おい…ガキ相手にそこまでせんでも…」
「うるせぇ、ナメられたまま帰れっか」
「…そんなん使わなきゃ、勝てねぇの?弱いねぇ、オッサン」