赤い狼と黒い兎
震えた手で、ビュンビュンナイフを振り回すオッサン。
こいつ…、ナイフ護身用に持ってるだけだな。
つうか、マジで危ないんだけど。
「…オッサン、人殺しになっちまうぜ?一生ブタ箱で生活すんのか?」
「うるせぇ!!おいッ、押さえろ!」
「ま…まじかよ…俺まで巻き沿いにすんな…」
「黙って従ってろ!!てめえから殺すぞッ!?」
……あー、なんかすげぇヤル気なくした。
俺は戦闘体制を直して、頭をガシガシと掻いた。
「つまんねぇからもういいや。じゃーな、オッサン」
「なっ!てめえ途中で放棄すんのか!!」
「ケンカ吹っ掛けて来たのはそっちだろ。」
「先にガン飛ばして来たのはてめえだッ!!」
ガキかっつーの。
くるりと踵を返して、そこを立ち去ろうとした。
「このクソガキ…」
「おい…今度ここで暴れたら“アイツ”に殺されんぞ!!」
アイツ…?
俺はその単語が気になって、振り向いた。
「アイツ…って誰だ?」
「は?…お前、知らねぇのか!?」
「はぁ?」
「命知らずな奴もいるもんだ……」
俺はますますワケがわからず、首を傾げた。
すると、真横から走ってくる足音が聞こえた。