赤い狼と黒い兎


そう言うと、男はコツコツと革靴を鳴らし俺の目前まで来た。

何かをされる、とか身構えねぇと、とか思ったけどそんな事をする前に蹴られた。



「気に食わねぇ…ガキはガキらしく家で寝てりゃあいいのによぉ……えぇ?」

「ガハッ…」

「死ぬか、詫び入れるか…どうするよ?」



男は蹴るのを止め、俺を見下ろす。

詫び入れる…?



「んな事するくれぇなら…死んだ方が、マシだ…」

「そうか。なら苦しんで死ね」



ニヤリと口の端を吊り上げて笑い、また足を降り下ろした。

あ〜、こんな奴に殺されんのか俺…。

……つうか、死ぬのか俺…。



「死ねぇええ!!!」



男がナイフを振り上げた。

ああ、ダメだ。

そう思ってぎゅっと目を瞑った。



バキィッ!

「ぐはっ!!!」

ドサッ…



そんな効果音が聞こえ、俺は恐る恐る目を開けた。

そこには、黒いパーカーを着てフードを被っている男?がいた。

ポケットに手を突っ込んで、飄々と立っている。

…男を見下ろして。



「…ッてめぇ、何しやが…。……!!」



そいつを見た瞬間、男の表情がみるみる真っ青になった。



「………。」

「お…お前は…!!」



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