赤い狼と黒い兎
おいおい…。こいつ、言ってること無茶苦茶だなぁ…。
「あと5分」
「は…?」
「あと5分したら、ここに救急車が来る。…いや、俺のメンバーのが早ぇかな…?」
救急車って…いつの間に……。
すると、どこからかバイクの音が無数に聞こえてきた。
「来たか…」
「な……」
「いいか?ぜってぇ腹から手ェ離すな、死んでも」
黒狼は俺の両手を怪我している部分に当てた。
「つっ…」
「痛くても我慢しろ。じゃねぇと、腐る」
脅しだ…。こんなんほぼ脅しだろ…。
怖ぇから逆らわねぇけど。
あー…ぜってぇまた朔弥に怒られんなぁこれ…。
「いいか?何を聞かれても“一方的にやられました”って言うんだ。それでダメなら俺の名を出せ」
「は…?そんなんしたらお前…捕まんぞ…」
黒狼はニヤリと不敵に笑い、言った。
「俺らmoonはサツの犬でもある。…俺の名を出しゃ、向こうも納得するさ」
そう言って立ち上がった黒狼を掴んだ。
「……何だ?」
「だったら、ここに居ても…平気だろ?」
黒狼は目を見開き、俺を見た。
…ここで、手を離したらもう二度とこいつには会えないような、そんな気がした……。