赤い狼と黒い兎
朱雀と狼月
終始郁の話を無言で聞いていた。
やっぱり…そんな“約束”してたか。
「…馨?」
『ん?』
「……。」
…あ、これはあたしが何かを言うべきか?
『いや、な?そんな事もあったなぁ…と』
「…ああ。あのさ…」
『うん?』
「ネックレス……」
そう言って、制服の中に隠れていたシンプルなシルバーネックレスを出した。
羽のついた、あたしのお気に入り“だった”ネックレス。
『あげるよ』
「えっ?でも…これ、お前の大事なネックレスだろ…?」
『うん。…だから、郁にあげる』
「……」
『危なっかしい、郁に。お守りとして、あげる』
郁は「そこまで言うなら…」と、ネックレスをまた制服の中にしまった。
…それ、本当にあたしのお気に入り“だった”んだよ。
だから、大事にしてあげてね…。
「…俺、ずっと気になってたんだけどさ」
『ん』
「あの男…どうしたの?」
そう聞いてきた郁に、あたしは意地悪をしようと不敵に笑った。
『聞きたい…?』
「へ?…い、いや…」
『後悔、しない?本当に、聞きたい?』
「…や、やっぱいい!言わなくていい!」
両手をパタパタと左右に振り、青ざめる郁。
かわいい…。真っ青になっちゃって。