赤い狼と黒い兎
『あたしは、moonを抜けると同時にサツと縁を切った。今じゃ、殺しなんてしてないさ。あたしの代で、あたしと幹部だけがしていたこと。新しく入った奴とか…元々いた奴なんかも、何も知らない。あたしらの単独だよ』
驚きで言葉も出ないような郁。
…ちょっと、早すぎたかこの話は。
「…何で、俺にそれを…?」
『……さぁな。間が指したんじゃないか?』
別に話す気は無かった。けど、勝手に口が動いたっつーか…。
「要は、馨の気まぐれね」
『………。』
「ま、別にいいんだけど。馨のこと知れたし」
『……何でそんなに嬉しそうなんだよ』
横目で郁を見ると、ニコニコと笑っていた。
「ん?何でだろうね?」
『……ふっ』
鼻で笑い、机に頬杖をついた。
すると郁が、何気なく言った。
「唯兎が気に入るのも…なんかわかる…」
『………。』
何だか知らんが、朱雀の総長に気に入られたみたいだ。
無音の音楽室に、携帯のバイブが異様に響いた。
…ってあたしか。
携帯を開いて、顔をしかめてから通話ボタンを押した。
『……もしもし』
《おっそーい!!!》