赤い狼と黒い兎
キーンと耳鳴りがする。
うるせぇ…、鼓膜破れるだろーが…。
《長い!遅い!つうか終わったの!?》
『……』
《ちょっと馨!聞いてるの!?》
春架が怒鳴るように…てか怒鳴ってるけど。
叫んでる、めちゃくちゃヒステリックに。
それはもう、うるさい。
《こっちはさ!むさ苦しい連中と一緒に居らされてさ!しかも屋上極寒!!早く音楽室行きたいんですけどッ!!って聞いてます!?》
あたしは携帯を耳元から離して、聞いていた。
こいつすげぇな、普通に聞こえちゃってるよ。
「…てかここあついくらいだけど」
『間違いねぇ。だから窓開けてんだけどね』
「どーするよ?」
『ん〜…』
《ちょっと、馨サン!!聞いてます!?つか桜庭!そこ居んだろ!うちの馨に変な事してねぇだろうな、てめぇ!》
なんかとばっちり受けた郁に「ごめん、気にしないで」と謝りあたしは春架に言った。
『黙れ。うるせぇよ。そんなに来たきゃこりゃいいだろーが。他人様巻き込むんじゃねぇ』
《す…すいませーん…》
『面倒くせぇ…。そこにいる奴等全員連れて来い』
《はぁ!?朱雀も連れてけってのッ!!?》
『なんか文句あんのか、春架。あ?』
そうドスの利いた低い声で言った。