赤い狼と黒い兎


あたしは、学校へ行くため(ほぼ強制的)に真新しい制服に身を包んだ。

…制服とか着たの、いつ以来だ?

それくらい記憶に薄く、遠い昔。

うちは親が両方とも亡くなったため、みんなでバイトを転々として稼いでいる。

母方の祖父母から毎月金が振り込まれてるけど、ね…。



「うん、かわいい」

『真顔で言うな、ボケ』

「兄貴、仕事いいのかよ」

「あっ、やべっ!」



兄貴はわたわたと支度をはじめ、作業着に腕を通す。



「わり、今日俺遅くなるから飯いらねぇわ!」

「おう」

「じゃっ、行ってくんな!」

「行ってらー」

『…行ってら』



そう小さく呟くと、兄貴は笑ってあたしの頭を少し撫でてから家を出ていった。



『……』

「飯、食ってから行くか」

『……ん。』



亜稀羅と他愛ない話をして、家を出た。

どうやら、あたしは亜稀羅のケツに乗せられるらしい。強制的に。



『…何で』

「正南はいろんな族がいる。抜けたっつっても信じてねぇ連中だっている。だから」

『……別に返り討ちに、』

「馨?」



ニッコリとブラックスマイルを見せられ、押し黙った。

…弟よ、いつの間にそんなに黒くなった…!



『…わかったよ』

「ん」



メットを被り、亜稀羅の後ろに飛び乗った。



「行くぞ」

『うん』



ほどなくして動き出すバイク。

…久々だから、なんか新鮮だなあ。



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