赤い狼と黒い兎


《い、いえ…ありません。今から音楽室行きます》

『おーう』



ぶちっと一方的に切り
携帯をポケットにしまった。



「一瞬地鳴りがしたぞ…」

『はい?…大丈夫か郁』



顔を青ざめさせて、あたしを見る郁を不思議に思った。



「いや…まぁ、気にすんな」

『?…気にしてないけどね』



机に片肘をついて、指でコツンコツンと机を弾くように叩いた。



『…あいつら』

「え?」

『あいつらとは、結構前から居るの?』

「ああ、唯兎たち?」



こくんと頷くと郁は目を細めて笑った。

…かっこいい。なんて。



「唯兎とは幼馴染みで、昔っからずっと一緒」

『へぇ……』

「朔弥たちは…確か、中2から一緒だったかな?」

『ふぅん……』

「聞いといて興味無さげ。」



そう言って苦笑いする郁に、ハッとした。

…別に、興味がないわけではないが。

どうしても一言返事が癖で、出てしまう。



『……癖だ』

「そっか」



すると、ドタドタと廊下を猛ダッシュで走って来る音が複数聞こえた。



バァーン!!!

「!」

「moon参上ぉ!!!」

「とぉーう!」



迷惑なことこの上無い。

因みに勢いよくドアを半壊させて入って来たのは、あのお騒がせな双子だ。



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