赤い狼と黒い兎


それを見てから、磨子を見るとびくりと肩を揺らした。



『磨子は?』

「……うん」



俯き、小さくそう呟いた。

朱雀には何がなんだかわからんだろうなぁ…。

当たり前か、内部事情を他人に話すやつなんかいねぇし。



「やっぱ、さ…馨」

『やっぱとかナシ。何?まだなんか文句あるわけ?』



少々面倒くさ気に春架を見れば、なんとも言えないような表情をしていた。



『…だから、あたしが…』

「それはダメ!」

「絶対、ダメ」

「次言ったら半殺しだよ?」

「「馨チャン」」



……違う場所に行こうか、という話になるとみんな真剣に止めてくる。

別に、一生の別れじゃあないんだけどなあ…。



「つーか、俺らいつまで放置状態?」



郁がつまんなそうにそう言った。



「…こっちはね、不本意なんだよ。あんたらがいるの」

「まあ?馨が連れて来いって言ったから?連れて来たけど」

「馨が連れて来いなんて言わなかったら、屋上で放置だよ」



…また、ちょっとした口論が始まった。

喧嘩っ早いっていうか、なんというか…。

口が先に出る。…手よりマシなんだけれど。

うるさい…んだよね、これ。



< 63 / 286 >

この作品をシェア

pagetop