赤い狼と黒い兎
それを見てから、磨子を見るとびくりと肩を揺らした。
『磨子は?』
「……うん」
俯き、小さくそう呟いた。
朱雀には何がなんだかわからんだろうなぁ…。
当たり前か、内部事情を他人に話すやつなんかいねぇし。
「やっぱ、さ…馨」
『やっぱとかナシ。何?まだなんか文句あるわけ?』
少々面倒くさ気に春架を見れば、なんとも言えないような表情をしていた。
『…だから、あたしが…』
「それはダメ!」
「絶対、ダメ」
「次言ったら半殺しだよ?」
「「馨チャン」」
……違う場所に行こうか、という話になるとみんな真剣に止めてくる。
別に、一生の別れじゃあないんだけどなあ…。
「つーか、俺らいつまで放置状態?」
郁がつまんなそうにそう言った。
「…こっちはね、不本意なんだよ。あんたらがいるの」
「まあ?馨が連れて来いって言ったから?連れて来たけど」
「馨が連れて来いなんて言わなかったら、屋上で放置だよ」
…また、ちょっとした口論が始まった。
喧嘩っ早いっていうか、なんというか…。
口が先に出る。…手よりマシなんだけれど。
うるさい…んだよね、これ。