赤い狼と黒い兎
正南学院前。そこにあたしと亜稀羅はいた。
グラウンドには、大量のバイク。
学校はさほど汚くもない。落書きだって、窓ガラスにヒビすら入ってもない。
ほんとに族がいるのか?ってくらい静かだ。
「バイク、置いてくっから待っててな」
『おーう』
ぽつん、と残されたあたし。
何気虚しいな…静かだし。
…てか、まだ誰も来てないとか?静か過ぎるし。
「お待たー…。…馨?」
『え?』
「どうかした?」
『どうもしてねーよ。ただ…』
「ただ?」
『静かだなあ、と』
それに亜稀羅はにこりと笑い言った。
「静かにしてないと、殺られるからね」
『?…なんだそれ』
「ま、理事長に会えば分かるよ」
あたしはますます訳がわからなくなり、首を傾げた。
会えばって…あたしが理事長を知ってんのか?
先頭を行く亜稀羅の背を少し見つめてから、数秒遅れて歩き出した。
理事長室に行く間に、亜稀羅はいろいろと案内をしながら行ってくれた。
なんとまあ、よくデキた弟で。分かりやす過ぎて怖いよ。
「――…で、最後がココ。理事長室ね」
『珍しいね。理事長室が3階なんて』
「見晴らしがいいからだって」
『……ふぅん』
どんな理由で設計されてんのこの学校。