赤い狼と黒い兎
亜稀羅はコンコンとノックをしてから、返事を待たずにガチャリとドアを開けた。
「しっつれーい」
「“しっつれーい”じゃねぇだろ。そこは“失礼します”だろぉが」
「あ?言っただろぉが」
「言ってねぇよ!明らかふざけてんじゃねーか!!」
「俺はいつでも真面目に不真面目だ」
「最後の不真面目はいらん」
このくだらないやり取り、いつまで続くんだ?
つうか、あたしを放置していいと思ってんのか??
「うわーすげー久しぶりの殺気だー…」
「…黙れ。馨?ごめんな?」
『亜稀羅は悪くないよ。…悪いのは青夜だから』
声をワントーン低くして、深々と椅子に座っているやつを見た。
加納青夜。そいつがここ、正南学院の理事長みたいだ。
「俺っ!?何故!?」
『最初に突っ掛かったのが青夜だから』
「理不尽だろそれ!つかお前、亜稀羅を甘やかし過ぎだ!」
『あ…?何だと…?』
「イエ、何デモアリマセン。」
片言で喋る青夜にふん、と鼻であしらいドカッと黒ソファーに座った。
「…相変わらずふてぶてしいなあ…」
『……』
ギロリ、と鋭い目付きで睨めばわざとらしく咳払いし話を切り出した。
「馨。最初に言っとくが、亜稀羅とは学年が違うからまず同じクラスになる事はない。わかってるな?」
『…当たり前だろ』
「よし。それと、だ。担任は……」
すると、バンッ!!と大きな音を立てて扉が開いた。