赤い狼と黒い兎


あたしと亜稀羅は驚き、青夜は小さく溜め息を吐いた。



「かっおるー――っ!!」



がばぁっ!と抱き付いて来る目の前の女。



『ちょ、なっ……』

「あー、久しぶりだあ…この感覚…」



その声と言い方にピンと思い当たる節があり、気付かれないように溜め息をついた。



『……離れろ、加奈子』

「いーやっ!久しぶりだもん♪」



再び溜め息をつき、とりあえずそのままにしておく事にした。

今さらだけど、青夜は朱雀っていう暴走族チームの5代目をやっていた。

ついでに兄貴もやってて、総長だった。もう1人の兄貴は副総長だった。

瑠宇と瑠衣は双子。でも…瑠衣は、殺された。

……、で加奈子…矢嶋加奈子はあたしがいたWolfMoonの初代総長。



「やっと、脱引きこもりになったのね!母さん嬉しいわっ!!」

『黙れ。誰が母さんだ』

「あらやだ。見ないうちにツンになっちゃって。まさか反抗期!?」

「こいつは毎日反抗期だ」

「母さん許しませんよ!」

『……潰すぞ、てめぇら…』



マジトーンで言えば、加奈子は頬を引き攣りながら離れ、青夜は顔を真っ青にし冷や汗を流していた。



「や…やぁだ、冗談じゃない馨ちゃん!」

「た、担任は加奈子だから!後は加奈子に聞け!」

「ちょ、せーや!?」



亜稀羅は至ってのほほんとしていて、加奈子と青夜は言い合っていて…。

いい加減飽きてきたし、イライラしてきた。



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