赤い狼と黒い兎
『…気にするな』
「無理」
流れ出る血を止めるように、ぎゅっと腕を握る唯兎。
?……よくわからん男だ。
「馨…」
「とりあえず、唯兎。馨を保健室連れてってくれ。今なら飯沼ちゃんがいると思う」
「わかった」
『あ、待って』
唯兎のシャツを掴んで、引き止めると首を傾げて振り返る。
あたしは青夜に顔を向けた。
『あたしのパソコン持って保健室来て。あと、加奈子も』
「…わかった」
「後で行くわ」
あたしがコクンと頷くと唯兎は腕を引っ張った。
…深子たちがやられたのは嶽のせいだと、そう言ったら…春架たちはどうするんだろうか。
―――いや、あたしのせいか。
「飯沼ちゃーん」
「唯。…何?また怪我??」
下げていた頭を上げると、目の前には綺麗で優しそうな女の人が目を細めて笑っていた。
『………。』
めちゃくちゃ綺麗だ。
…モデルさん?に見間違えても可笑しくない。
「そ、怪我。俺じゃねぇけど」
「あらあら…。ん?そちらの彼女?」
目がばちりと合い、小さく会釈するとその女の人が目を見開いた。
…何だろう…。
「女の子…!それにめちゃくちゃ可愛いじゃないっ!!」
唯兎を押し退けて、あたしの前にやってくる。