初恋
「送ろうか?」
「いやっ。いいです。」
怖いくせに。
送って欲しいくせに俺に遠慮をする美夏。
でも俺はあえてしつこくいわず
そか。じゃあな。といって美夏を見た。
「ありがとうございました。」
頭を下げて階段を降りていく美夏。
俺は戸を閉めて自分の部屋に戻った。
また里奈がいなくなったみたいで、
またなにか失たみたいで、
すごく辛くて
里奈を思い出して
俺は泣いた。
美夏は美夏だ。
美夏は里奈じゃない。
里奈はもういない。