優しい囁き
温もりが欲しくて
「あー…めっちゃ重い。なんであたしが…。」

遅刻のペナルティとして課せられたのは、化学の課題を集めて化学準備室に持っていくというもの。

プリントだったらよかったのに、運悪く問題集で。40人分はやはり重い。

「はぁー…やっと着いた。」

とりあえずドアの前に問題集を置いて、ノックしようとした。

「んっ…ちょっ、やめっ…て…くださいっ。」

「やめてほしくないくせによく言うよ。」

明らかに今入ったらお邪魔だろって感じの声が聞こえてきた。

信じられない。
朝っぱらからなんてことしてんだ。
…なんて、人のこと言えないけどさ。

でもあれは聞き覚えのある声だった。…まさかね。






「あーそれ、化学の北原でしょ?」

ナナがあまりにも普通に言うから、今飲んでたいちごミルクを吹き出しそうになった。

「…まじで?」

「ミユ知らないの?有名だよ?北原は生徒とヤりたい放題だって。」

「あんな地味なくせに、やることやってんだ…。」

ナナがお菓子を出してきて「いる?」と差し出してくれたので、遠慮なくもらった。

お菓子をむしゃむしゃ食べながらナナが続ける。

「まぁでも、生徒から誘いにいくみたいだけどね。北原からは手を出さないんだってさ。来るもの拒まず、去るもの追わず。」

「ふぅん…。上手いのかな?」

「興味あるなら一回してみれば?そっちの方がいいならケンと切れるいいきっかけかもよ?」

あたしは別に気持ちがいいからケンとしてるわけじゃないのに…。

まぁでもそれもそうかなと思って、さっそく放課後に行ってみようと決めた。
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