猫のあくび
その夜、
空から星が
パラパラと落ち始めた。
文字が吹き込まれた星たちは
それぞれの音を発しながら
地上へと降り注いだ。
恋人たちには
愛の囁きになり、
喧嘩をした親子には
仲直りのきっかけとなった。
殺意を抱いたものは
もう一度考え直し、
家路へと向かった。
ひとつの星に
ひとつの言葉。
その言葉たちを吹き込んでいたのは
山の頂上に住む
一匹の猫。
孤独な猫は
空に向かってつぶやく。
「どの言葉を選ぶかは、結局自分自身なのさ。」
猫の頭の上を、
数多くの星が
空を埋め尽くしていた。