水に映る月
開いた自動ドアを通り、マンションの外に出た。
いつの間に降っていたのか、小雨が降る路上に、水溜まりが出来ていた。
水面に月が揺れている。
まるで、手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、触れ合えないココロみたい。
寂しく月が映っていた。
どんなに触れて欲しくても、その手に掬(スク)われることは無い。
─ あたしの想いと同じ‥
零れる涙を拭いて、あたしはマンションに戻った。
パネルの部屋番号を押し、チャイムを鳴らす。
「はい‥。」
と出てくれた慧に
「ゴメンナサイ‥。」
と、謝って、自動ドアを開けて貰った。