水に映る月
 

開いた自動ドアを通り、マンションの外に出た。


いつの間に降っていたのか、小雨が降る路上に、水溜まりが出来ていた。


水面に月が揺れている。


まるで、手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、触れ合えないココロみたい。

寂しく月が映っていた。


どんなに触れて欲しくても、その手に掬(スク)われることは無い。



─ あたしの想いと同じ‥



零れる涙を拭いて、あたしはマンションに戻った。

パネルの部屋番号を押し、チャイムを鳴らす。


「はい‥。」


と出てくれた慧に


「ゴメンナサイ‥。」


と、謝って、自動ドアを開けて貰った。


 
< 106 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop