水に映る月
部屋に戻ると、慧はベッド下の階段に座っていた。
そして
「雨、降ってたんか?」
って、さっきとは違う優しい声で訊いた。
小さく頷くと、彼は立ち上がり、クローゼットの扉を開けて、取り出したタオルを手渡してくれた。
「ちゃんと拭いてから寝ろよ。風邪ひくからな。」
「うん‥。」
切なくて、切なくて、また涙が溢れて来たけど‥。
今の距離を縮めることは出来なくても、せめて保っていたいから‥。
─ もう、慧を困らせない‥
あたしは、自分の胸に誓った。