水に映る月
 

九時前に、慧に連れられて近くの内科に行った。


病院には朝から患者さんが多く、小一時間ほど待たされた後、診察を受け処方箋を貰った。


「薬、飲んだら治るんやろ?」


「うん。塗り薬と錠剤、貰った。早く家に帰って、薬飲みたい。」


蚊に刺された時のような痒みが、全身をゾワゾワさせる。

あたしは、マンションに戻るなり錠剤を飲んで、塗り薬を塗った。


だけど、背中に手は届かない。


「ケイちゃん、お薬塗ってよ。」


ベッドで横になってテレビを見ていた慧に、下着姿のままで近付いた。

そして、軟膏を差し出した。


 
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