水に映る月
∮05 偶然
小一時間ほどで、慧は『到着』とメールをくれた。
あたしは、不機嫌なタケルくんにバイバイを言って、彼の部屋をあとにした。
階段を降りながら、慧の車を確認する。
運転席のドアが開き、中から彼が降りて来た。
「ケイちゃん‥、ごめん。」
あたしは、慧の前に立った。
彼の顔を見た途端、また涙が溢れて来た。
慧は優しく頷いて、助手席のドアを開けた。