水に映る月
「月曜やったかな。シンさんが家に来た時、純ちゃん、あの人と、すれ違ったやろ?違う?」
慧に訊かれて、思い出した。
エレベーターを降りた時、エントランスで、すれ違った男の人のこと。
「やっぱ、あの時の?」
「うん。あの時、純ちゃんのこと紹介してくれって、シンさんに頼まれて‥。」
「マジで?ケイちゃん、何て答えたん?」
「親戚の子やから無理って、諦めて貰った。」
“親戚の子”っての、引っ掛かった。
けれど、紹介されなくて良かったって、ホッとした。
ヨシトのケー番だけでもショックだったのに‥
他の人を紹介されたりしたら、立ち直れなくなりそう‥
そう思って‥。