水に映る月
 

ベッドの位置から、玄関は見えない。

あたしは体を起こして、ベッドに座った。


ほどなくして、慧が部屋に姿を現した。


「ケイちゃん、おかえり。」


あたしは、極力明るい声で彼に声を掛けた。


「ただいま。ごめんな、起こしてしまったな。」


「ううん、帰って来るの待ってたねん。」


「なんで?」


「うん‥。ケイちゃん、お風呂入るやろ?そのあとでイイ。」


慧は、眉間に皺を寄せて、不思議そうな顔をした。

だけど、何にも訊かなかった。


あたしに無言で頷いて、彼はバスルームに入った。


 
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