水に映る月
∮09 距離
一瞬だけど、慧は怖い顔をした。
怒鳴られると感じて、あたしは、ビクンッと肩をすくめた。
けれど、慧は黙ったままだった。
気まずい空気を感じて、あたしは俯いた。
重苦しい沈黙が流れる。
─ ヤメとけば良かった‥?
不安で胸が詰まりそうになった。
「純ちゃん‥。」
慧は、あたしを呼び掛けた。
あたしは顔を上げ、視線を合わせた。
彼は、優しい口調で
「距離、置こか。オレら‥。」
って、言った。