水に映る月
自首を説得するとか、スペードの意味とか、一瞬にして木端微塵に吹っ飛んだ。
慧を失いたくない。
その想いだけが強くココロを占めた。
「イヤ!ケイちゃん、さっき距離置くって言ったやん!忘れてって、なに?あたし、イヤや!ねぇ!ケイちゃん!!」
込み上げる激情を抑え切れず、あたしは叫んでいた。
慧は、振り返ってくれなかった。
無言のまま靴を履いて、玄関のドアを開けた。
あたしがユーナさんを知っている理由も‥。
彼女に会いに行った理由も‥。
慧は、何も訊かなかった。