水に映る月
 

目の前で、車が停車した。

フロントガラス越しに、彼と目が合う。


何をすればいいとか、どうすればいいとか、何にも解らない。


伝えたい想いは山ほどあるのに、一つも言葉が出て来ない。


ただ、慧を引き留めたかった。



彼は左腕を動かして、サイドミラーに視線を遣り、車をバックさせた。



─ 戻って来てくれる‥



ホッと息を吐いたのも、束の間。

慧は、あたしが立ってる側とは逆方向に車を走らせた。


 
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