水に映る月
 

追い掛ける恋より追い掛けられる恋の方がシアワセになれるって、聞いたことがある。


けれど、今のあたしは、サトルをすきになれない。


「ありがと。あたし、行くわ。」


「どこに?てか、寝てったらイイやん。オレ、なんもせぇへんで。」


「うん。でも、イイ。」


あたしはバッグを持って立ち上がり、玄関に向かった。


「純ちゃん!」


サトルが呼び止めた。


「なに?」


あたしは、振り返った。


「想い、伝わらへんのはツラいかもやけど‥、ガンバれよ。」


そう言って、寂しげな顔を見せる彼にバイバイと手を振り、あたしは部屋を出た。


 
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