水に映る月
ママの言葉を、胸の中で何度も繰り返した。
─ そんなに愛してるんなら、信じて待ちなさいよ ─
諦めて後悔したくない。
もし仮に、どうしたって慧のキモチを、あたしに向けることが出来なくても‥。
自分で決めたことに失敗したって、きっと後悔は生まれない。
反省することはあっても、後悔はしないから‥。
「ママ、ありがと‥。」
塀の外から白い建物を見つめた。
ほんの一瞬、正気を取り戻したママは、もしかしたら、弱り切ったあたしのココロが見せた幻覚なのかもしれない‥。
「また会いに来るね‥。」
ママは、今もまだ、帰らぬ父を待ち続けているのかな‥
父の面影を求めて、恋を繰り返した果てに‥
この塀の外に出られないママを思って、あたしの頬に涙が伝った。