水に映る月
 

どんなに待っても返事は来ない。



捕まったのかな‥

だから、ケータイを触れないのかな‥



彼のケー番を、液晶画面に表示する。

あたしは、発信キーを押した。


少しの間があって、電話が繋がった。


「ケイちゃん‥っ。」


《現在、電源が入っていないか、電波の‥》


聞こえて来たのは、無機質な音声だった。



─ うそ‥



悲しくて、悲しくて‥。

一人でいるのが、どうしようもなく怖くて‥。


バッグにケータイを押し込んで、コートを羽織り、あたしは部屋を飛び出した。


 
< 282 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop