水に映る月
どんなに待っても返事は来ない。
捕まったのかな‥
だから、ケータイを触れないのかな‥
彼のケー番を、液晶画面に表示する。
あたしは、発信キーを押した。
少しの間があって、電話が繋がった。
「ケイちゃん‥っ。」
《現在、電源が入っていないか、電波の‥》
聞こえて来たのは、無機質な音声だった。
─ うそ‥
悲しくて、悲しくて‥。
一人でいるのが、どうしようもなく怖くて‥。
バッグにケータイを押し込んで、コートを羽織り、あたしは部屋を飛び出した。