水に映る月
行く当てなく彷徨(サマヨ)った。
もう、数え切れないくらい泣いたからだと思う。
悲しくてたまらないのに、涙は出なかった。
清香にメールをしたけど、また家に連れ戻されてるって、返事が届いた。
ケータイが使えるなら、そう酷くは怒られていないんだと感じた。
きっと、何ヶ月もの長期の家出で、親も参ってるんだ。
あたしは、仕方なくサトルのアパートに足を運んだ。
─ 誰でもイイ‥
一緒にいてくれるなら‥
そう思っていたけど‥。
「純ちゃんっ!」
玄関ドアを開けたサトルは、とても慌てていて‥。
ふと、彼の足元に目を遣ると、女物のウェスタンブーツが置いてあるのが見えた。