水に映る月
 

振り返って、相手を見た。


知らない女の子がカラコンの瞳で、あたしに微笑んだ。



─ 誰だっけ‥



考えてみたけど、思い出せない。

あたしは小首を傾げて、彼女を見つめた。


「ワタシやん!ほら、中学で同クラだった静江!」


「しずえ‥?」


名前を聞いても、まだ分からなくて‥。


「誰‥?」


尋ねると、彼女は「竹之内」だと言った。

その名字で思い出した。


中学生の頃も、あたしは彼女の名字しか知らなかった。

「静江」と名乗られても、思い出せるワケが無い。


その上、あたしの記憶にある竹之内静江とは、似ても似つかない出で立ちで‥。


 
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