水に映る月
 

何か訊かれるのかと思っていた。

そのせいか、なんだか落ち着かなかった。


だけど、ユーナさんは帰り際、ワゴンの服を整理しているあたしに


「ガンバってね。」


と、囁くように言って、通り過ぎただけだった。


あれ以来、ユーナさんは、あたしと慧のことを知らない。

だから、仕事のことを言ったんだと思う。


優しさに触れたせいかな‥。

涙が潤んで来た。


 
< 297 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop