水に映る月
 

湿気で曇ったガラス戸から、外の様子は分からない。

あたしは、白く曇ったガラスを拭こうとした手を止めた。


人差し指をガラスに付ける。

ひんやりと、冷たい感覚が肌に伝わって来た。


あたしは指を滑らして、そこに文字を書いた。



   ケイちゃん

   だいすき



─ ねぇ、ケイちゃん‥



「会いたいよ‥。」


我慢していた涙が胸の奥を熱くした。


どうしようもなく、切なくて‥。


そして、苦しかった。


 
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