水に映る月
 

空がうっすらと白んで来た。

いつの間にか、雪は止んでいた。


有明の月が、光を失して浮いている。

明るみを帯びた空に、寂しげに浮かんでいる。


体の芯まで冷え切ってしまうと、寒さって感じなくなるのかな‥。

疼くように痛かった足先は、感覚を無くしていた。



夜通し、車の音がする度に振り向き、何度、確認したんだろ‥。


背後でエンジン音が響いていたけど、もう振り返らなかった。


行く当てなんかない。

だけど‥。



─ もぉ帰ろっかな‥



そんな躊躇いを感じた時‥。

駆け寄る靴音が近付いて来た。


 
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