水に映る月
 

早朝の街に車を走らせて、慧は話してくれた。


これまでも二回、オデコをくっつけた時、あたしにテレパシーを送ったんだって‥。



 ── だいすき ──



きっと、伝わっていたんだって思った。



「言い訳させてな。」


そう前置きをして、彼は遅れた理由を説明した。


実家に戻ったら、急に母親の具合が悪くなった。

父親は夜勤だし、ヨシトは留守で連絡も取れなかった。


だから、夜通し、慧は病院にいたんだって‥。



「もう会えんようになるし、最後の親孝行やな‥。」



警察の捜査を避ける為、ケータイは使えないからと、マンションに放ったまま。


連絡をしようにも、あたしの番号を記憶していなかったと、慧は話した。


 
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