水に映る月
 

路上で、アクセサリーを売っている業者を見掛けた。

布製の黒いシートの上に、シルバーのアクセやキーホルダーが並んでいる。


あたしは立ち止まり、それを眺めた。


「これ、ください。」


袋は要らない。

業者にそう伝えて、お金を手渡した。


小春日和って言うのかな‥。

太陽が暖かくて‥。


薬指に引っ掛けた、スペードのキーホルダーがキラキラ光って揺れている。



─ 待ってるね‥



あたしは、足を踏み出した。


慧とあたしが出逢ったことの意味を、胸に感じて‥。


 
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