水に映る月
青が点滅し出した横断歩道を渡り、ファミレスの駐車場に入った。
シゲくんの車には、一度だけ乗ったことがある。
「泊まるとこ無いから付き合ってよ♪」
軽いノリで、彼を誘った夜に。
─ 赤い車だったけど‥
左側で、車のドアが開いた。
振り向くと、シゲくんが車から降りて来たのが見えた。
「シゲくん。ごめん、遅くなって。」
あたしは、彼に近付いた。
「ありがとう。来てくれて。」
彼は、照れくさそうに笑った。
だけど、ここに来た理由を勘違いされると困るから‥。
「断りに来た。」
あたしは、シゲくんに、そう告げた。