水に映る月
 

「うん。そう言われるって覚悟してた。でも‥。」


シゲくんは、今日でバイトを辞めたって言った。

だから、最後に、もう一度キモチを伝えたかったんだって‥。


「純ちゃん見てたら、俺、苦しくなるから‥。」


「ありがと。でも、あたしは誰とも付き合いたくないねん。前も言ったと思うけど、あたし、広く浅くがすきやから。」



あの日‥。

シゲくんを誘った夜、彼は“カノジョになって欲しい”と言った。


あたしは、それを断った。



─ えっちは、お泊まりのお礼やもん。すきやからしたんじゃない。あたし、カレシいらんねん ─



なのに、その日以来、シゲくんは、あたしのココロを自分に向けようと必死だった。


デートに誘って来たり、欲しいものは無いかと尋ねて来たり‥。


あたしは、そんな彼のキモチが重くて、ずっと避けていた。


 
< 42 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop