水に映る月
「うん。そう言われるって覚悟してた。でも‥。」
シゲくんは、今日でバイトを辞めたって言った。
だから、最後に、もう一度キモチを伝えたかったんだって‥。
「純ちゃん見てたら、俺、苦しくなるから‥。」
「ありがと。でも、あたしは誰とも付き合いたくないねん。前も言ったと思うけど、あたし、広く浅くがすきやから。」
あの日‥。
シゲくんを誘った夜、彼は“カノジョになって欲しい”と言った。
あたしは、それを断った。
─ えっちは、お泊まりのお礼やもん。すきやからしたんじゃない。あたし、カレシいらんねん ─
なのに、その日以来、シゲくんは、あたしのココロを自分に向けようと必死だった。
デートに誘って来たり、欲しいものは無いかと尋ねて来たり‥。
あたしは、そんな彼のキモチが重くて、ずっと避けていた。