水に映る月
暫く待ってみたけど、慧は出なかった。
「寝てるんかな?」
独り言を呟き、もう一度インターホンを押そうかと悩んでいた時、マンションの住人らしき女の人が中から出て来た。
開いた自動ドアが閉まる前、咄嗟にエントランスに入った。
─ 不審者と怪しまれたかも‥
なんて、不安になったりして。
エレベーターに乗り、慧が住んでいる四階に上った。
401号室の前で立ち止まり、呼吸を整える。
これから悪戯を始める子供みたい。
ワクワクとDOKIDOKIが入り交じった変な心境だった。