水に映る月
少しの静寂の後、慧は沈めた体を起こし、車を走らせた。
降りなくて済んだことで、ちょっぴり安心を感じて、あたしは涙を手のひらで拭いた。
そして
「どこ行くの?」
と、尋ねた。
慧は、黙ったまま答えなかった。
あたしは、前を走る車のテールライトを見つめていた。
エミネムの曲だけが響く車の中、あたし達は、ずっと無言だった。
前方に、派手なネオンが沢山見えて来た。
慧はハンドルを左に切り、ラブホテルの駐車場に車を乗り入れた。