水に映る月
停まった車の中、彼に降りる気配は無かった。
あたしは、ずっと俯いたままだった。
不意に
「カノジョになりたいんやろ?」
と、慧は訊いた。
─ 試されてるのかな‥
そんな風に感じたけど、あたしは小さく頷いた。
─ なんでもイイ‥
慧と一緒に居られたら‥
えっちすることでカノジョになれるなら、少しも苦じゃない。
そう思ったけど‥。
彼は、ケータイを取り出すと
「シンさんに‥、さっき電話してきた先輩に連絡取るわ。イイ仔いてるから来てくださいってな。」
と、抑揚の無い声で言った。