水に映る月
ダブルベッドの真ん中に、慧は枕で境界線を作った。
そして、あたしに奥に寝るように言った。
「こんなん、いらんくない?」
「一応な。オレも男やし。ソファで寝てもいいけど、疲れ取れへんからな。」
慧にとって、あたしは“危なっかしい子”
放っておけないから、家に置いてくれるだけ。
そのことを、暗に強調されてるみたいで哀しくなったけど‥。
「あたし、めッちゃ寝相悪いねん♪」
「マジか?蹴るなよ。」
「うん、オヤスミ♪」
今はそうでも、これから慧のキモチを、あたしに向ければイイ。
清香と泊まった時には意識していなかったけど、お布団は慧の匂いがした。
エアコンの効いた涼しい部屋。
柔らかな香りのするシーツに顔を埋めて、あたしは夢の中に入った。