水に映る月
 

料理は嫌いじゃない。


中学生の頃から、病気で視力が弱くなった祖母のお手伝いを、よくしていたから。


───
 ────


「純ちゃん、ニンジンみじん切りにしてね。おばあちゃん、目が悪いからね。」


「はい、はぁい♪」



祖母が生きていた頃は、良かった。

辛くても寂しくても、甘える場所があった。



「純ちゃん、毎月千円ずつ貯めてね、いつか北海道旅行しよう。」


「うん♪でも、何年掛かるか分かんないね。」


「楽しみがあっていいじゃない。おばあちゃんね、若い頃に一度行ったきりだしね。もう一度、北海道に行きたいんよ。」


「じゃ、いつか一緒に行こ♪」


 
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