遠吠えクラブ
 でも今日は、ひとまず体重のことは忘れよう。

 学生時代から料理自慢で鳴らした千紘の、ひさびさの手料理だもの。自他ともに認める食いしん坊番長の千紘は、絶品揃いの美夏の自慢料理の数々を想像しただけで、だらしなく頬がゆるむのが今から抑え切れない。
 
 昔からの取り決めで、家での集まりには一人一品持ち寄ることになっている。美夏ほどではないが、千紘も料理が嫌いなほうではなかった。アイディア勝負の千紘の料理はいつもパーティーを盛り上げる格好の話題をつくりだして、主催者を喜ばせた。

 だが、校了で朝帰りした千紘の部屋の冷蔵庫は空っぽもいいところだった。でも幸運なことにたまたま前日、「農家」をコンセプトに
した自家菜園のとりたて野菜が売り物のレストランを取材していた。そこでもらった、見るからにおいしそうな濃いグリーンの大玉キャベツがある。

 そこで千紘が作ったのは、ちぎりキャベツの塩昆布・ごま油和えだ。料理名がイコール調理法、というくらい簡単な料理だが、なかなかどうして、前にこれを作って食べさせたある若い男性デザイナーが、
「僕、これだけでご飯を三杯は食べられます」
と感動したくらいなのだ。

 絶対に1人で丼に山盛りは軽くあっという間に食べてしまうから、大量に持って行かなければ。
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