遠吠えクラブ
 でもきっと、自分の考えすぎだ。

 千紘はこれまでの人生であまりモテたことがなく、恋愛経験であまりいい思いもしたことがなかった。だからよけいに、ありもしないことを考えすぎてしまうのかもしれない。

 男性にもてないことを、特別寂しいとも思わなかった。男にあれこれ気を使うより、女同士でおいしいものを食べに行ったり芝居を見たりするほうが楽しいのだ。本にはそれが負け犬への直線コースと書いてあったが。

 でも結婚するために自分の好きなことをあきらめるなんて、そんな馬鹿らしいことできるものか。それに雑誌編集部のチーフになってからは、ちやほやしてくれる売出し中のカメラマンやデザイナーがいつもまわりにいて、寂しい思いをすることもなかった。

 とはいえ、先輩のある女性編集者が閑職である企画室に移籍した時、そうした若い男性スタッフの取り巻きがいっせいに魔法のように消えたのも見ていた。いずれ自分もそうなるだろう。だったら最初から彼らに、依存も期待もしないほうがいいのだ。
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