遠吠えクラブ
 とにかく千紘には、聡が本当に危険な男かどうかまるで見当がつかなかった。男性経験が豊富そうな羽純が、聡にあんな変な妄想を持っていなければ意見を聞けたのに。

 羽純の男性関係は、昔から千紘にも美夏にも謎だった。隠しているが、じつはかなり恋愛経験が豊富なのではないかと睨んではいたが。

 でも人生とは本当にわからないものだ。あの羽純が、シングルマザーになるなんて。

 あの夜、額から血を流しながら、タクシーを待たせたまま千紘のマンションのドアに前に立っていた羽純の姿を、千紘は一生、忘れることができないだろう。

 でもまあ、そんな羽純も近頃はやっと落ち着いてよかった。

 羽純のことだからきっと、すぐにいい男が寄ってくるだろう。
 今日はあの変な妄想は忘れて、楽しんでくれればいいんだけど。本当に久しぶりの再会なのだし。
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